社会課題と市民活動内容
市民活動の活性化や、社会課題解決に向けたキーワードとなる「連携協働」。
前回は、この「連携協働」の捉え方について、大阪市市民活動総合支援事業を推進する、立場の異なる3人のインタビューをご紹介しました。
三者三様の捉え方の中でも共通して必要と考えられていた「異なる団体がゆるやかにつながる場づくり」。この「ゆるやかな場づくり」の一つとして、大阪市市民活動総合支援事業の委託事業者である株式会社アクセプトでは「市民活動×市民活動 ソコチカラプロジェクト」を進めています。
今回は、そのひとつのコンテンツである「ステップアップ交流会」が6月21日、大阪市中央区の大阪産業創造館で行われましたので、ご紹介します。
この日の交流会は、大阪市内で小学校区を基本としてまちづくりに取り組む磯路地域活動協議会(港区)会長の佐野耕司さんと常盤地域活動協議会(阿倍野区)会長の棚町泰英さん、一般社団法人ひとことつむぐ(生野区)理事長の足立須香さんの3人の素敵なゲストをお迎えし、「地域活性・まちづくり」をテーマにゲストプレゼンテーションや、ワークショップが行われ、市民活動に携わるNPOや任意団体、企業などが参加し、熱気に包まれていました。
交流会終了後、3名のゲストから地域内の連携協働のリアルをインタビュー、貴重なお話をいただきました。
参加者は、「子どもたちの居場所づくりが大事。地域全体の居場所づくりには、さまざまな団体がゆるやかなにつながることがポイントですね」、「いろんな人を巻き込むこと。コロナ禍だからできた活動を知ることができました」、「さまざまな活動の工夫を知って刺激を受けました」と感想を語っていました。
「地活協」は、自分たちのまちを自分たちの力でよくしたいとまちづくりに取り組む地域組織で、磯路地域は、子どもから高齢者まで幅広い世代を対象に、安全安心なまちづくりを進めることをポリシーとしています。
2013年から毎月発行している磯路地活協通信が今月、100号を迎えました。まちづくりに取り組む地活協の目標を「やさしさに満ちた、安心してすこやかに暮らせるすみよいまちに」と掲げています。そこから「やさしさ」(健康と福祉)、「あんしん」(防災と防犯)、「すこやか」(こどもの健全育成)、「すみよい」(環境と文化)と四つの部会の名前を取りました。
地活協通信にもお知らせを載せましたが、パソコン操作が苦手な高齢者のために、コロナワクチン接種の予約のお手伝いをさせていただきました。ひとりひとりの困りごとに目配りしています。
配食サービスも展開し、元気な方にはお弁当を取りにきてもらい、希望される方にはお届けさせていただきます。区の広報紙とともに地活協通信を3600世帯に全戸配布し、古紙回収にも取り組んでいます。各種団体連絡会を設けることにより、相互の情報交換や地域連携の仕組みづくりにも努めています。
常盤地域は、あべのハルカスのふもとの地域です。昔ながらの一戸建ては減って、マンションやタワーマンションが新しく建設される人口急増エリアとなっています。常盤小学校の児童数は1,300人いて、運動会に子どもと両親が集まるだけで4,000人近くになります。綱引きなどの体育イベントや地域の防災活動や孤食対策、居場所の役割を果たす子ども食堂なども活発ですし、協力の輪が広がることは心強いと考えています。
私は会社員です。サラリーマンでも会長を務められることを示し、若い世代にも積極的な参加を促しています。体温を感じて話すのが好きなので、コロナ禍であっても、感染対策を行ったうえで、リアルに会うことを大切にしました。
情報共有の手段として、役員と部会長にLINEで連絡を取り合おうと提案すると、ガラケーを持っていた人も役員みんながスマホを用意してくれました。役員間の情報共有がスムーズになり、会長の役割も楽になりました。
LINE、インスタグラム、facebook、ツイッター、ホームページを活用して広報・啓発や情報発信に取り組み、引っ越ししてきた新しい住民にも活動への参加を呼び掛けています。
私はもと教員なのですが、教員としての最後の勤務校が、生野区の御幸森小学校でした。この地域は自分の故郷でもあり、この学校での様々な出会いと学びによって、この町の魅力を再認識しました。「ここにみんなが集える場所を作りたい」と退職後にもどってきて校区内に「まちの拠り所~Yosuga~」を開所、2018年「一般社団法人ひとことつむぐ」を設立しました。
隣接する阿倍野区は1300人のマンモス校があります。一方、生野区は人口流出が激しく、小学校の再編統合に伴って、児童数75人の御幸森小学校は今春、閉校になりました。
生野区は多文化共生のまちであり、人情のあるまちです。1,600年の歴史がある「猪飼野(いかいの)」と呼ばれるこの地域には歴史と文化があります。
だから子育て世代が戻ってくるように、まちの魅力を発信して、活気を取り戻したいと活動しています。
活動のひとつとしての子ども食堂「Yosuga食堂」を始めて、毎週木曜日に弁当30食を無料配布しています。弁当を取りに集まる子どもたちと、「兄ちゃん、姉ちゃん、どうしてる?」「困ったことがあったら、ここに来たらええよ」とコミュニケーションを交わす場になっています。
今はコロナ禍による休業や就労機会の減少等、大変な状況に直面した人が増えています。だからこそ人に寄り添い、悩み解消のために熱心に取り組む地域の担い手や居場所の存在は希望であり、とても重要なものだと思います。
取材を担当して
交流会の参加者が楽しそうに前向きに対話に加わる姿が印象的でした。コロナ禍の渦中にある今だから、実際の場で人と交流できる場はいつも以上に価値があります。一人では、アクションを踏み出せなくても、別の経験を重ねた人と力を合わせることで新しい展開が生まれるかもしれない。ゲストや参加者の話を聞きながら一回だけで終わらせることなく、こうした交流会を積み重ねていくと可能性が広がると感じました。
まとめ・記事構成:中尾卓司
次回の第3回ステップアップ交流会は9月9日(木)開催。詳しくはこちらです。
https://kyodo-portal.city.osaka.jp/course/24000011653/