市民活動ワクワクレポート内容
地域と大学のつながりから生まれたプロジェクト
大阪公立大学の学生たちが中心となって取り組んでいるプロジェクト【とびだせひみつきち】。その背景には、地域と大学、そして若者たちが一丸となって社会課題に取り組む姿がありました。
今回、ボランティアコーディネーターの松居勇さんと学生さんたちにお話を伺ってきました。
地域の方々から「商店街をもっと元気にしたい」「地域の居場所をつくれないか」という相談が、大阪公立大学のボランティア・市民活動センターに寄せられ、
ケースに応じて学生とのマッチングを促進したり、プロジェクトチームを立ち上げ、実践的な地域活動をされています。
【とびだせひみつきち】は、そうした取り組みの一つ。
学生で構成された【とびだせひみつきち実行委員会】を中心に、
松居さんを事務局長として動き出したプロジェクトです。
3年前に大阪府立大学と大阪市立大学が統合されて以降、地域との関わりが
一層深まる中、四恩学園とも継続的な連携が始まり、
昨年、四恩学園の永栄さんから「学生とタッグを組んで、腰を据えて取り組める何かを一緒にやれたら」と提案を受けました。
永栄さんは、CSW(コミュニティソーシャルワーカー)として日々の仕事の中で、
“居場所のない若者”の存在に強く課題を感じていました。
「こども110番」など地域での活動を重ねる中で、「学生と一緒に新しい形の居場所を作れないか」と考えるようになり、松居さんを含めた学生5名に話を聞いてもらったところから、プロジェクトが動き出します。

同年代だからこそできる“寄り添い方”
「ひきこもりの人たちのための居場所をつくりたい。でも、どうすればいいか分からない。学生と一緒ならできるかもしれない。」
その思いを聞いた学生たちは、まだ何も手がついていない段階だからこそ、
可能性を感じ、一緒に「とびだせひみつきち」を立ち上げました。
プロジェクトは翌月から本格的に始動。
背景には、いわゆる「8050問題」──高齢の親が病気や死亡などで支えられなくなったとき、長年ひきこもっていた中高年の子どもが社会とどう繋がるかという問題があります。
長期的なひきこもりになる前に、何かできることがあるのではないか。
若いうちから人との関係を閉ざしてしまう前に、小さなきっかけが作れたら。
学生たちは、自分たちだからこそ同世代の気持ちに寄り添えるのではないかと考えました。
就職活動、人間関係、孤独感──。
そういった不安や悩みを抱える20代前後の若者たちにとって、
安心して過ごせる“サードプレイス”を目指し、月1回の話し合いを重ね、
今年1月、「とびだせ!ひみつきち」がついにオープンされたのです。


地域や大学の垣根を越えたつながり
この取り組みが始まってから、四恩学園との距離もぐっと縮まりました。
もともと昼開催だった子ども食堂も、学生が空腹のまま打ち合わせに来る姿に配慮して大学生との活動をきっかけに夕方開催にシフト。
最近では、地域のお祭りやイベントにも一緒に参加するようになり、「大学」と「地域」がゆるやかにつながるきっかけにもなっています。


学生たちの声
~このプロジェクト参加のきっかけ~
• 「自宅から近くて、気軽に参加してみた」
• 「“たこ焼きやってるよ”と友達に誘われた」
• 「こども食堂でカレーが食べられると聞いて」
~活動して感じたこと~
• 「知識では知っていた“いろんな人がいる”を、肌で実感できた」
• 「引きこもりや不登校といっても、人それぞれなんだと気づけた」
• 「どうしたらいいか分からなくなる時もあるけど、悩みながら進めている」
• 「続けて来てくれる人が増えて、少しずつ会話ができるようになった」
~社会に伝えたいこと~
• 「ただ“いてもいい”場所が、まだまだ足りていない」
• 「『あなたは、存在しているだけでいい』というメッセージを伝えたい」
• 「気軽に来てください。仲間がいるから続けられます」
• 「自由な過ごし方ができる場所があることを知ってほしい」

今後について
「普段、家から出ない方が“今日は来られた”と話してくれる。それが何よりの成果です。」
「この活動を通して、社会に伝えたいことは「優しさがある場所がある」ということ。誰かに会いたくなったら、ここに来ていい。
そんな居場所が、もっと世の中に広がってほしいと【とびだせひみつきち実行委員会】のみなさんは言います。
最後に
参加のきっかけは違えど、一つの課題に対して
学生たちが地域と連携しながら若者たちの居場所づくりをする
そのまっすぐな想いと行動力が新たな居場所を創り出す。
【とびだせひみつきち】は、そんな眩しくてあたたかな場所です。
今後もその動向を追っていきたいと思います。
取材・記事作成:シミポタ運営事務局(大山 智現)